戸建ての断熱リフォームには、窓だけを変える方法から、床・天井・壁まで手を入れる方法まで、いろいろな選択肢があります。
大事なのは、断熱材を増やせばよいわけではないことです。寒さや暑さを感じる場所、家の状態、普段使う部屋、予算によって、優先する工事は変わります。
住宅業界で30年以上仕事をしてきた中で、私はまず、壊さずにできる方法があるかを確認します。そのうえで、その家にとって費用に見合う工事を考えることが大事だと思っています。
この記事でわかること
- 断熱リフォームで選べる主な方法
- 窓だけの断熱から始める場合の考え方
- 洗面所や寝室など部屋ごとに断熱する方法
- 内付加断熱・外付加断熱の違い
- 床・天井・窓に絞る工事の考え方
1. 断熱リフォームは、どこを直すかで方法が変わります

断熱リフォームというと、壁を壊して断熱材を入れ替える大がかりな工事を思い浮かべるかもしれません。
実際には、窓・床・天井・壁のどこを断熱するかによって、工事の内容も負担も変わります。家全体を対象にするのか、寒さが気になる部屋だけを対象にするのかも、先に考えたいところです。
1-1. 寒さ・暑さを感じる場所から原因を見ます
冬に足元が冷える家では、床下の断熱材が不足していたり、落下していたりすることがあります。床下から入った冷たい空気が壁の中を通り、室内の冷えにつながっている場合もあります。
夏の2階が暑い、暖房をつけても部屋が暖まりにくいという家では、天井や屋根裏、窓の状態も見ていく必要がありますね。
部位を別々に見るのではなく、家の中で空気がどう動いているかを考えることが欠かせません。
1-2. 一度に家全体を工事しなくてもよい
家全体を断熱できれば理想的ですが、予算や暮らし方を考えると、すべてを一度に工事するのは難しいものです。
洗面所だけ、寝室だけ、窓だけという進め方にも意味があります。まず今いちばん困っている場所を改善し、その後の暮らしや予算を見ながら次を考える方法もあります。
2. 始めやすい窓の断熱リフォーム

窓の断熱は、比較的取り組みやすい方法の一つです。
冬に窓際が冷える、結露が気になる、夏の日差しで部屋が暑くなるといった悩みは、窓の影響と関係していることがあります。
2-1. 内窓を付ける方法
窓の断熱では、既存の窓の内側に内窓を取り付ける方法があります。ほぼ壊さずに進められるため、住みながら検討しやすい工事です。
補助金の対象になることがほとんどなので、費用的にも意外と安くすんだりするんですよね。
リビングや寝室など、長く過ごす部屋の窓から始めると、工事後の暮らしもイメージしやすいかもしれません。
2-2. 窓だけを見て決めない
窓際が寒いと、窓だけが原因だと考えがちです。
けれど、床からの冷気や、壁の中を通る空気が関係している場合もあります。窓の工事を考えるときも、床下や天井裏に入れる家であれば、その状態まで見ておくことが大事ですね。
3. 洗面所・寝室・リビングを部屋ごとに断熱する方法

家全体ではなく、部屋ごとに断熱することもできます。
予算に限りがある場合や、使っていない部屋がある場合は、生活の中心になる場所へ予算を集中させる考え方が現実的です。
3-1. 洗面所は浴室との温度差を考える
入浴前後に使う洗面所が冷えていると、暖かい部屋や浴室との温度差が大きくなりやすくなります。
いわゆるヒートショックの危険性が高まります。
意外と知られてませんが、ヒートショックが原因で亡くなられるかたは、交通事故よりもはるかに多いんですよ。
「お風呂から出ると、寒くて凍えそう・・・」
毎日、そんな悩みを抱えてらっしゃる状態なら、ここは最優先で対処したほうが良いかもしれません。
また、洗面所だけを見ても、窓の有無、床下からの冷気、天井からの影響によって必要な工事は違います。
小さな部屋でも、寒さの原因を確認することが大切なんですよね。
3-2. 寝室は朝の冷えを基準に考える
冬の朝、布団から出るのがつらいなら、寝室の窓・床・天井を優先して考える方法があります。
家全体を工事しなくても、毎日使う寝室の環境が変われば、日々の負担が軽くなる場合があります。
朝、布団から30分早く出ることができるだけでも、やれることってかなり増えますよ。
「断熱リフォームをした後に、布団から出るのが苦じゃなくなった。」と言われる方はかなり多いです。
3-3. リビングは過ごす時間の長さで判断する
家族が集まるリビングは、断熱の優先順位が高くなりやすい場所です。
寒くてコタツから出たくないって、トイレを我慢したりしてませんか?
リビングが暖かくなれば、コタツともお別れですね。
快適な部屋で、Netflixに没頭するなんて1日も悪くないですよ。
4. 壁まわりの断熱方法:内付加断熱・外付加断熱とは?

ここまでは、窓や部屋ごとの断熱を見てきました。ここからは、少し耳慣れない「内付加断熱」「外付加断熱」という言葉が出てきます。
どちらも、壁まわりの断熱に関する方法です。名前は難しそうですが、考え方は意外とシンプルです。まずは基本から、順番にお話ししていきます。
4-1. そもそも、壁の中はどうなっているの?
壁というと、1枚の板のようなものを思い浮かべるかもしれません。実際には、いくつかの層が重なってできています。
外側から順に、外壁材、柱や下地の板、そして室内側の石膏ボードとクロス、という具合です。柱と柱の間には空間があり、築年数が新しい家ではそこに断熱材が入っています。
一方で、古い家では、壁の中に断熱材がほとんど入っていない、入っていても薄かったり隙間があったりすることも珍しくありません。
この壁の中の断熱材を入れ替えようとすると、室内側の壁か外壁のどちらかを、一度はがすことになります。だから「壁の断熱は大がかりな工事」というイメージが広まっているんですよね。
4-2. 「付加断熱」とは、今ある壁に断熱を足す考え方
付加断熱の「付加」は、付け加えるという意味です。
壁の中の断熱材を入れ替えるのではなく、今ある壁はそのままに、その室内側または外側から、断熱材を一枚足す方法のことです。
服にたとえるなら、中に着ているシャツを脱ぎ替えるのではなく、上からもう一枚着込むようなイメージです。
その「足す位置」が家の中側なら内付加断熱、家の外側なら外付加断熱と呼び分けています。
ただし、この言葉は会社や資料によって使い方が異なることがあります。この記事では、既存の壁に断熱材を追加する位置によって、室内側から行う方法を内付加断熱、外壁側から行う方法を外付加断熱として説明します。
では、内側から足す場合と外側から足す場合で、何が違うのか。まずは違いを表で見ておきましょう。
| 方法 | 断熱材を追加する位置 | 主に考える場面 | 注意したい点 |
|---|---|---|---|
| 内付加断熱 | 室内側の壁 | 内装をやり直す工事と合わせる場合 | 部屋が狭くなる、コンセントや建具に影響する場合がある |
| 外付加断熱 | 外壁側 | 外壁改修と合わせる場合 | 外壁工事を伴うため、工事範囲と費用が大きくなりやすい |
| 床・天井・窓の断熱 | 床下・天井裏・開口部 | 壊す範囲を抑えながら寒さ・暑さを改善したい場合 | 床下や天井裏、空気の通り道も確認する必要がある |
4-3. 内付加断熱は室内側から断熱材を加える方法
内付加断熱は、壁の室内側に断熱材を追加する方法です。外壁には手を入れないので、足場を組む必要がなく、外から見た家の姿も変わりません。
その代わり、室内側の壁の仕上げをやり直すことになります。クロスの貼り替えなど、内装の工事と一緒に考える方法です。
また、断熱材の厚み分だけ、部屋が少し狭くなります。コンセントや窓まわり、建具との取り合いにも影響する場合があり、壁だけを見て決めるのは難しいですね。
4-4. 外付加断熱は外壁改修と合わせて考える方法
外付加断熱は、外壁を改修する際に、外側から断熱材を追加する方法です。外壁の外側に断熱材を足し、その上から新しい外壁材で仕上げます。
内装に大きく手を入れずに進められる可能性がある一方、足場を組む外壁工事を伴うため、工事の規模は小さくありません。外壁を直す予定があるなら検討する価値がありますが、寒さ・暑さの改善だけを目的に選ぶなら、床・天井・窓でできることとも比べる必要があります。
このように、壁の断熱は効果が期待できる一方で、内装か外壁の大きな工事がセットになります。そこで私たちが考えているのが、次にご紹介する方法です。
5. 床・天井・窓に絞る「そのまんま断熱」という考え方

断熱リフォーム相談室では、壁は開けず、床・天井・窓を中心に断熱する方法を「そのまんま断熱」と呼んでいます。
すべての家に同じ方法が合うわけではありません。ただ、内装や外壁を大きく壊さずに、床下・天井裏・窓からできることを考える方法は、多くの家で比較する価値があります。
5-1. 壁を壊さないことにも価値があります
壁を開けると、断熱以外の部分まで工事が広がり、内装の復旧も必要になります。住みながら工事する負担も大きくなりやすいものです。
もちろん、家の状態によっては壁まで含めた工事を検討する場面もあります。とはいえ、古いから壊せばよいとは簡単に言えません。必要以上に壊さず、限られた予算をどこに使うかを考えることも大事です。
5-2. 断熱材と一緒に気流止めを確認します
床下では床の断熱を考え、天井裏では天井の断熱を考えます。窓には内窓を取り付ける方法があります。
その際に重要なのが気流止めです。簡単に言うと、壁の中を通る空気の流れを区切る施工です。
断熱材を入れても、空気の通り道が残っていれば、寒さや暑さを感じることがあります。私たちは床下や天井裏を確認するとき、断熱材の状態だけでなく、気流止めの有無も重要な項目として見ています。
壊さないことは、性能をあきらめることではありません。どこに断熱を入れ、どこで空気を止めるかを考えることが必要なんです。
6. 断熱する場所の優先順位はどう決める?

優先順位は、「どこが寒いか」「どこが暑いか」だけでは決まりません。
家族が過ごす時間、使わない部屋の有無、床下や天井裏の状態まで見て考えます。
6-1. 困っている場所を出発点にする
洗面所の冷えが気になるなら洗面所、朝の寝室がつらいなら寝室、長く過ごすリビングが寒いならリビングを優先する考え方があります。
部分的な工事であっても、床下や天井裏を通る空気の流れはつながっています。だから、工事する部屋を絞る場合ほど、家全体との関係を見ておきたいですね。
6-2. 見えない場所は、できるだけ目で確認する
床下や屋根裏は普段見えない場所です。写真や想像だけで工事計画を立てず、可能な限り中に入って状態を確認します。
床下も屋根裏も入れない家では、点検口を設けてから中へ入り、情報を集めることもあります。断熱材の状態だけでなく、空気の通り道になっていないか、気流止めがあるかも確認します。
断熱リフォームは、大きく壊す工事だけが正解ではありません。窓だけ、部屋だけという方法も比べながら、その家に合う優先順位を考えるところから始めてみてくださいね。
壁を大きく壊さずに進める断熱リフォームの考え方も、あわせて参考にしてみてください。

どこから断熱するか迷ったときは、家ごとの優先順位の決め方も確認しておきたいところです。


